生き心地の良い人生に

*

お父さんのちょっとした記憶

   

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僕にはお父さんがいる。

 

今も昔も、お父さんとはあまり話さない。

 

お父さんは基本的に暗い人だ。

 

ときどき明るくひょうきんになることもあるけど

 

たいていは静かで悩みが尽きないような表情をしていた。

 

子どもにもあまり関心がない人だった。

 

保育園の時、朝の送り迎えはお父さんの役目だった。

車に乗っている間、お父さんはほとんど話しかけてこない。

お父さんはすぐにカセットテープをセットしてスイッチを押す。

すごく耳障りの良いメロディが流れてくる。

 

“I once had a girl or should I say she once had me?”

 

僕はじっとしたまま、後部座席に乗って流れる景色を見ていた。

 

 

夕方、仕事から帰ってくると居間に横になって何か考え事をしている。

 

ときどき、「今日は学校どうだっけや?」と聞いてくる。

 

お母さんが帰ってくるまで、ご飯は食べられない。

 

僕は何時にお母さんが帰ってくるのかわからない。

 

お腹が減ってきて(減りすぎて)我慢できず

 

「お母さんは?」と、お父さんに聞く。

 

「お母さん、もうちょっとしたら帰ってくる」

「お母さん今日夜勤だぁ」

 

だいたい、こんな感じの答えが返ってくる。

 

僕は 「今日のご飯はどうすんな?」と聞く。

 

お父さんは 「あ、〇〇、飯まだか!」と、少し慌てる。

 

「出前取ろう。何がいい? うどんが、らーめんが、チャーハンが?」

 

僕はとてもうれしくなる。 弟もなんとなく、うれしそうだ。

 

 

 

 

 

 

 - 家族

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